いろんな感想

以前からiPhoneでkindleを使っていたのですが、paperwhiteを買ってからは特に読書が捗るし、たくさん読もうと思えます。あと、以前は小説くらいしか読まなかったのですが、最近はビジネス書も読もうと思っているので、せっかくなので感想を書いてみようと思います。

『MEDIA MAKERS ― 社会が動く「影響力」の正体』 感想とネタバレ

発売日 : 2012-11-12

 

『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』を読みました

表紙に「メディアに踊らされずにメディアで人を踊らせる法」と書いてありますが、

踊らせる方法、

すなわち「こうすれば、こんなメディアを作れば、上手くマーケティングができますよ」

といったような具体的なことは書いてありません。

 

けれども筆者自身はメディアのカエル(=どっちつかずで両生類のように水陸を行ったり来たりする存在)と自負しており、

そのインターネットメディアの黎明期から様々に関わってきた筆者だから書けることが詰まっていて、最近読んだ本の中でもかなり良書だったと思います。

 

要旨(ネタバレあり)

本書はまず、第1章の筆者の自己紹介から始まり、

第2章は一般ビジネスパーソンにもなぜメディアの知識が必要なのか。

それはメディアで起こっている変化はビジネス一般(ファイナンスなど)について起こっている変化と共通点が多いから、など現代の経済界周りの変化と合わせてメディアを学ぶ意義が書かれています。

 

第3章はメディアというものの定義と歴史の解説。

こちらはアカデミックな一般的な解説(mediaという言葉は「媒体・媒質」を意味するmediumの複数形)と、さらにメディアを3つに分類すると、「(狭義の)media」「Community(&Social)」「Tool」などに分けられること、

メディアが成立するためには「発信者」「受信者」「コンテンツ」が必要なことなどが書かれています。

 

第4章ではいよいよ詳しい話になっていき、いくつかのメディアの話や、

メディアの「予言の自己実現能力」の話、影響力や信頼性、ブランド価値の話、

メディアが形成する「業界」の話などが出てきます。

 

第5章はメディア自体の話というよりも、コンテンツの話、つまり中身の話に移っていきます。筆者はほぼ全てのコンテンツは3つの軸で分類することができ、ストック・フロー、参加性・権威性、リニア・ノンリニアで分けられるとしています。

それぞれの言葉の意味と解説、例も出てきますので、これ以上は是非手にとって読んでみてください。

 

第6章はペルソナやブランディングについて。

この辺りはビジネス目線のメディア論という感じで、ビジネス用語も交えつつ、しっかりお金についても書かれているので好感が持てます。

メディア野郎だけでなく、一般サラリーマンにとっても読みやすいと思います。

(大学生で論文用にこういうメディア関係の書籍を本当に本当に初めて読むという方は、別の本も併読した方がよいかもしれません。)

 

第7章はメディアとテクノロジーのお話で、レコードがCDに変わったことで音楽業界にもたらした変化などを例えとして用いています。

要するに、媒体が変わることでもたらされる変化についての章といったところでしょうか。

テクノロジーのお話になると様々な本で「アーキテクチャの支配」という言葉が聞かれますが、本書でも「アーキテクチャの支配」に触れています。

第8章は第7章をより詳しく。

 

最後、第9章は、まとめの章。

全章を踏まえて、これからのメディアの形として個人型メディアが興隆していくのではないか。

個人型メディアと従来型メディアの今後、それらによってもたらされるノーボーダーな社会の予想などが書かれています。

 

感想

大学生のときに興味でメディア論関係の本は読んでいたのですが、

昨年のWELQ事件などを経て、ウェブニュースメディアに関する本などを読み漁っています。

その中でもWELQ事件より前に書かれたもので、矜持の無いメディアは死す、ということが伝わってくる良書で、

WELQはその通りになってしまったなぁ、と、しみじみ考えさせられました。

個人的には第3章、第4章、第5章がここ最近読んだ本の中でも独自の切り口で面白かったです。

大学生の方でもビジネスマンでも、読むことができ、文章がとても分かりやすく上手にかかれています。

 

ただ、こうすれば良いみたいな結論は明確に述べられていないのでご注意を。

もちろんこうすれば良いという結論があれば、そしてそれが本に書けるようなものであればとっくにそれはやられていて、コモディティ化していると思うので、「なんで結論がないんだ!」と憤る人にはこの本は向いてないですね。

メディアを取り巻く状況は刻一刻と変わってきているので、この本は2012年の本ですから、そのときの予想と現状を比べて考えてみてもおもしろいかもしれません。